「人の死」考えさせる、臓器移植法改正案も題材に
「人の死とは何か」。東京都墨田区の都立墨田川高校教諭の白石直樹さん(47)は、生命倫理を育もうと、20年以上も生徒自身に命の問題を考えさせる授業を続けている。
「人が死ぬってどういうことだろう」。墨田川高校で6月30日に行われた生物の授業。冒頭でそんな疑問を1年生20人に投げかけた白石教諭はまず、「脳死は人の死か」をテーマにした報道番組のビデオを生徒に見せた。
テレビに映し出されたのは、深夜の救急病院。バイク事故で血だらけになった少年が運ばれてきた。13歳。医師から少年が脳死状態であると告げられ、ぼう然と立ちつくす父親。2週間後の14歳の誕生日に亡くなった少年をみとった父親は「脳死状態であっても、誕生日まで生きてくれてよかった」と語る――。
白石教諭はビデオを止めると「心臓死」と「脳死」の違いを説明する。「脳死は生物学的に死ではない」と人の死とは認めない識者の意見や、「脳が死んだら人は消滅する。脳死は人の死だ」と、正反対の意見の医師の言葉も紹介した。
臓器移植法改正案もかっこうの題材になる。「脳死は人の死」を前提に現行では禁止の15歳未満からの臓器提供を可能とするもので、先月、衆院で可決して話題になった。現在は舞台を参院に移して審議されている。そこでは、この改正案とともに、15歳未満の臓器提供などを内閣府に設置する調査会で検討する対案も提出された。子供の脳死判定には問題点も指摘されているからだ。そうした世の動きを説明しつつ白石教諭は「君たちならどのように考えるか」と問いかけた。
生徒の反応は様々だ。男子生徒の1人は「自分が脳死になったら、死んだと思ってもらってもいい。でも家族が脳死になったら心臓が止まるまで死んだと思いたくない。『脳死は人の死』と一律に法律で決めるのは行き過ぎでは」と語った。
一方、別の男子生徒は逆の立場。「臓器移植を待つ人は多い。『脳死は人の死』とし、家族の同意だけで移植できるようにするべきではないか」と話した。
生物を担当する白石教諭がこうした授業を始めたのは23年前。細胞死など「生物学上の死」だけでなく、生命倫理としての「死」を考えさせるのが狙いだった。「簡単に結論の出る問題ではないと思えることが重要。結論を出すのではなく、考えることが大事」と話している。


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