学びたいのに:奨学金の課題 読者の反響特集 格差、なくならないのか
「親だって子に学ばせたい」「お金がないと進学できない社会なのでしょうか」。6月9日から3回にわたり連載した「学びたいのに 奨学金の課題」に多くの体験談や意見が寄せられました。教育費がなぜこうも高いのか、格差はなくならないのか。反響の一部を紹介し、改めて考えました。
◇孫を進学させたい=神戸市、主婦(76)
中学2年生の孫と2人暮らしです。10年前に体の弱い息子が離婚して私が引き取り、2歳のころから育てています。私は足に障害があり働けず、年金と生活保護の生活。孫は念願のバスケット部に入りました。でもこんなにお金がいるなんて知らなかった。ユニホームや靴下代、練習試合も交通費がかかります。生活を切り詰め、何とかやっています。私は孫に「あんたがおるからおばあちゃんは幸せなんやで、元気でいられるんやで」と言います。孫は私の宝。高校にも行かせたいけれど、不安でたまりません。進学への道ができるよう願います。
◇親の苦労分かって
周りの高校生は皆さん恵まれた環境で学校に通っています。共働きのわが家は夫の減収に頭を痛めていますが、息子2人は私立の中高生で、小学生の長女も私立中学を受験します。でも、うちの子たちは「学びたい」のでしょうか。親がどんなに苦労して学校に行かせていることか。一方で連載に登場した子たちは、学びたいのに学べない。公立高校は義務化して国が費用を出すべきだと思います。=東京都世田谷区、看護師、石田美幸さん(44)
◇返還考えためらい
母子家庭で、娘が今春私立大学に入学しました。入学金は親族から借り、娘はアルバイトしています。入学前に母子福祉資金の修学資金貸し付けを利用しようとしたのですが、連帯保証人がいないなどの理由で申請できませんでした。何のための貸し付けか分かりません。
わが家の経済状況からすれば、大学で4年間過ごすには奨学金なしでは大変です。娘には入学後に申請をしてもらいました。無利子貸与が無理なら有利子貸与をと考えていますが、返還を考えると極力借りたくないのが正直なところです。経済的に困窮した家庭が多い昨今、低利の奨学金を増やし多くの人が恩恵を受けられるようにしてもいいのではないでしょうか。=東京都葛飾区、デパート勤務、女性(45)
◇行政の負担拡大を
府立高校で進路指導を担当しています。昨秋の経済危機の影響もあってか、日本学生支援機構の大学予約奨学金の申請希望者が、昨年の倍近くに達しています。給付ではなく貸与が基本の公的奨学金の申請者や、就学援助・授業料減免を受ける人、生活保護受給世帯などの増加を通じ「進学格差=経済格差」の実態を感じます。本校でも進学が決まり奨学金貸与も内定した生徒が、経済的理由で最終的に断念、フリーターとなりました。無力感を感じさせられました。
日本では国や行政の教育コストの負担が少なく、競争だけを強化すると格差が拡大するのは明らかです。教育行政を転換すべき時期だと思います。=大阪府池田市、大阪府立高校教諭、田上浩さん(46)
◇教育の安全網不備に「胸が痛む」 苦学し東大卒業も…研究の道、断念
<「子どもの貧困」と、それに対応しきれていない行政のあり方に胸が痛みました>
こんなメールを寄せた東京都の団体職員、岩崎明日香さん(23)を訪ねた。長崎県出身で6人姉弟の上から2番目。家は経済的に恵まれず、高校、大学と日本学生支援機構の奨学金で学んだという。
小学4年生の時に父が事業に失敗、一家全員で夜逃げした。借金返済に追われ続けた父ががんで亡くなると、母(46)が6人の子を抱えて働きづめに。清掃業の収入と遺族年金を合わせても年収は300万円にも満たない。勉強好きだった姉(25)が高校進学を断念し、ウエートレスや家庭教師の仕事をかけ持ちして家計を支えた。
「私は勉強だけしていていいのか」と悩んだが、母も姉も「しっかり勉強して」。東大一本に絞り猛勉強し、現役で合格した。実家から仕送りはもらわずに奨学金と深夜までのアルバイトで生活し、余裕があれば月2万〜3万円を家に送った。
ぎりぎりの生活を支えたのは夢だった。「大学院に進み、子どものころから好きだった日本文学の研究者になりたい」。そのためにはまた奨学金を借りなければならない。
しかし、日本学生支援機構は昨年12月、返還を延滞した人の情報を信用情報機関に登録する「ブラックリスト化」を発表。消費者金融の多重債務者と同じように、延滞すればクレジットカードを作ったりローンを組むのが難しくなる。「私を支えてくれた奨学金が、家族を苦しめ続けた『借金』としか見られなくなってしまったの?」。今春の入試直前に、進学をやめた。
少しして、実家から朗報が届いた。一度は勉強をあきらめた姉が高卒認定を取り、長崎大の夜間コースに入学したという。
実家にはまだ小学生の弟と妹もいる。教育のセーフティーネットの将来には不安が尽きない。でも「これからは母や姉がしてくれたように、私も弟たちを支えていきたい」。
◇カードで寄付OK−−あしなが育英会
病気や自殺などで親を亡くした遺児の進学を支援する「あしなが育英会」はクレジットカードによる寄付の受け付けを始めた。VISA、JCBなど8社が利用可。ホームページ(http://www.ashinaga.org/index.php)で氏名、連絡先、カード番号などを入力すると、口座から引き落とされる。1回1000円以上20万円以下。問い合わせは同会(電話03・3221・0888)。


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